たからばこ

好きなものを好きなだけ

アイドリッシュセブン メインストーリー 第5部 4章 感想

 

 

 

今回配信分ラストの4章です

 

 

「長期間の密着型ドキュメンタリーを」という話を聞いて、1番に出てくる懸念が「ファンの子の夢を壊してしまうのではないか」な三月くん、本当に根っからのアイドルだよなぁ

 

アイドリッシュセブンの世界で「アイドルになりたくて」ここにいる子は彼だけなんだよな

兄を追いかけてでも、弟の治療費のためでも、父親への復讐心でもない

調理師免許まで持ってる三月くんは、もっと安定した、実家を継ぐとかそういう道も選べたはずなのに、確実に、自分の意思で「アイドル」を目指してきた

他の子達の理由がダメとかじゃなく、それってとても稀有なことだと思うから

ただ真っ直ぐアイドルっていう夢だけを追いかけてここまで来た三月くんは本当にすごい

 

 

松永さんのこの企画に乗せた思い、私はすごく良いなと思ったんだよ

「完璧な人が不完全なものを見せることで、不完全な人も未完成なものを見せやすくなる」って本当にその通りで

この世の中にはクオリティの高いものが溢れていて、誰もが初めから完璧なはずなんてない、そんな簡単なことさえも私たちはすぐに忘れてしまう

他人のすごいところばかりを見てしまって、自分には才能がない、僕はダメだと挑戦することを辞めてしまう

だけど、そんなすごい人たちでも"普通"であるということ、私たちと同じであることを知ることで「なんだそっか、じゃあ僕だって頑張れば出来るのかもしれない」と、希望を持つことができるようになる

そうして何かを始めた人が、またすごい人になって、そしてそれを見た誰かがまた何かを始める

そうやって希望を繋げていくことが出来るのなら、この企画はとても素敵なものだと思った

 

だけどちょっと不安なところもあるんだよなぁ

おもしろい番組だとは思う
だけど、キラキラしたアイドルの裏側、日常まで特別で"アイドルらしいもの"にされてしまったら、彼らはいつもキラキラしているように映るんじゃないのか


彼らだってただの人だと思って貰えなくなるのは、怖い

 

上手いこと「アイドルたちだって未完成な瞬間がある」と思ってもらってほかの人たちが動き出すきっかけになればいいけど、「こんなに頑張れるのは彼らがアイドルだから、人のために頑張って輝く努力を厭わないからだ」と思われてしまえば、それはアイドルたちに無理を強いても問題ないような空気になって、彼らを窮屈にしてしまうことになる

九条鷹匡の言う「アイドルの資質」を、アイドルみんなが持っているのだと大衆に思わせてしまうことになる

それはとても危険だ

 

いつか天くんが言っていた

「イメージは右から左に変えられるほど安直じゃない」

もし、大衆に「アイドルとは生きながらにして他人を笑顔にするためならどんな努力も惜しまない、それを苦痛と思わない資質を持った者なんだ」と思わせてしまったなら、そしてそれがアイドルのイメージとして定着してしまったら…

そんな未来が来ないことを祈るしかないな

 

 

松永さんがTRIGGERに対して発した「古い」という言葉には共感できないけど、彼は決してアイドルやタレントたちへのリスペクトがないわけじゃないんだよな

それだけは間違いないと思う

ただ、自分の価値観を全てのアイドルに当てはめようとしてしまったのがなぁ…という感じ

たぶんそこがたくさんの人の反感を買った理由じゃないんだろうか

 

 

宇都木さん、ŹOOĻのこと本当によく見てるよな

あぁ、あの子たちのことちゃんと分かってくれてるんだなと思った(誰?)

 

 

私はかなり、松永さん寄りの考えをする方なんだよな

アイドリッシュセブンを通して、マネージャーという立場からアイドルの裏側を見て、アイドルだって生身の人間なんだと知ることで、彼らをもっともっと好きになれたから

いろんな事情で集まって、いろんな問題を抱えながら、たくさんたくさん頑張ってファンたちの前でキラキラしたアイドルで居ようとしてくれてる、そんなIDOLiSH7が、TRIGGERが、Re:valeが、ŹOOĻがすごく好きなんだ

 

つまり、例えば私がただのファンとして、裏側を何も知らない立場であの世界にいたとしたら、TRIGGERの失墜にはただただ失望することしか出来なかったと思う

 

だから、松永さんの言う「大衆に彼らの裏側をもっと見せていたら、違う結果になったんじゃないか」というのはその通りだと思ったんだよな

みんなが本当のTRIGGERの姿を知っていたら、きっと画面越しに裏側を見てきた私たちのように思えたんじゃないか

 

姉鷺さんの怒りもごもっともだし、TRIGGERが悪いとは言わない

ファンには「醒めない夢だけを見せていたい」それを貫いてるTRIGGERをとてもかっこいいと思っているし、そのTRIGGERの意志を継承しているナナライでの3人もかっこいいと思ってる

だけど「辛い」や「しんどい」は教えてくれないと分からないよ

見せてくれなきゃ、知らせてくれなきゃ、分からない


TRIGGERだって人間だよって、そんなことは頭では分かってる

だけど、あまりにも完璧でいられると、彼らは別にわたしたちの手助けなんて必要としていないんじゃないか、むしろ邪魔なんじゃないかって、そう思っちゃうんだよ
そういう松永さんの気持ちも、わたしはすごく分かる
こちらが迂闊に手を出してはいけないような気がする

 

彼らが本当は苦しんでいたんだって、気付いた時にはもう遅い
きっと松永さんも、ほかにもたくさん、そうやって、TRIGGERが本当に失墜してしまって、そうなってから後悔した人はたくさんいたと思うよ

あのときに手を伸ばせなかったこと、死ぬほど後悔するけど、でもやっぱり何も言われなかったら壊れた後にならないと気付けないんだよな

私たちは違う人間だし、他人の心を透視できる能力もない

 

TRIGGERが悪いなんて言わない
ファンには希望しか見せない、その姿勢をとってもとてもかっこいいと思ってる
だけど、いい面ばかりを見せられていては気づけない面もあることを知っていて欲しいし、そういうスタンスでいるのなら、苦しさに気付いてもらえなかったことを嘆いちゃいけないと思うんだ
言わないで、隠しておいて、分かってくれよと言うのは勝手すぎるんじゃないのか

 

IDOLiSH7はありのままの自分たちを見せて共感や親しみを呼ぶと同時に、常に大衆の前にヌードを晒すような行為を強いられている

TRIGGERは常にかっこよくあるために幾重にも鎧を纏っていて、だからこそその中にある傷には気付いてもらえない

 

結局、何かを成すには何かを捨てるしかないんだろう

IDOLiSH7は自分たちを守ってくれる鎧を、TRIGGERは傷を見せる機会を、それぞれ捨てたんだ

それなら、その捨てたものによって産まれる不利益を他人のせいにしてはいけないと思う

 

今回TRIGGERが助けてもらえなかったのは、ある種の自業自得だ

彼らが100%悪かったなんて言わない

そもそも、失墜したことに関して彼らの非はどこにもなかった

だけどあそこから1度も止められず、この状況まで墜ちてしまった理由の一つには、それまでのTRIGGERの在り方も関係していると思う

もしあれがIDOLiSH7だったのなら、或いは。なんて、タラレバの話しかできないけれど

 

TRIGGERは悪くない、だけど、手助けしなかった、出来なかった周りが悪いわけでもないと思うんだ

 

そしてそういう時、もし、TRIGGERの裏側を、彼らだって苦しいし悲しむんだということを知っている人がいたのなら、もっと違う対応だって取れたんじゃないかと思う

だから松永さんの言葉は真実だよなぁ、と思ったわけです

 

まぁ「古い」っていう言い方はちょっと違ったかな

いろんなスタンスのアイドルが居ていい

どのアイドルもとっても輝いていてカッコイイんだよ

そして自分の考えをTRIGGERに押し付けようとしたのも良くなかった、たぶん

TRIGGERの良さがハイブランドにあることも事実だからね

 

こうやってみると「ありのままの自分たちを見せたい」IDOLiSH7と「ファンには夢しか見せない」TRIGGERはかなり相反する信念でアイドルをしてるんだな

 

どちらが良いとか悪いとかじゃない

どっちもカッコよくて、どっちも素敵だ

 

いいんだよ、この企画はTRIGGERには合わなかった

それでいいんだと思う

アイドルの時代だからって、復興を担う4グループだからって、みんなが同じ方向を見て足並みを揃える必要はどこにもない

それぞれがそれぞれの良さで輝いていればいい

完璧なTRIGGERも、親しみのあるIDOLiSH7も、優しい先輩で絶対王者であり続けるRe:valeも、ロックでクールなŹOOĻも、みんな最高のアイドルだ

 

 

姉鷺さんがTRIGGERのマネージャーでいてくれて本当に良かったな

誰に何て言われても、たとえ時代遅れだったとしても、彼らが目指す完璧なTRIGGERを少しも疑わず、信じていてくれる人があの3人の傍にいてくれて本当に嬉しい

姉鷺さんがいてくれるから、TRIGGERはどんな場所でもTRIGGERらしく居られるんだよな

彼らがいちばんカッコよくいられるようにしてくれる、そんな人がそばに居てくれるのはなんて幸福なことだろう

 

 

天くんさぁ…自分が全てを背負う気満々じゃんね…

本当にやめてくれ

陸くんの治療費のために九条鷹匡について行った件もそうだけど、彼のこういう自己犠牲精神はやっぱり好きじゃない
それは優しさじゃないと思うから
でも天くんはそんなこと十二分に分かってるだろうな

誰かに優しくしたい訳ではなくて、誰かが犠牲になるところを見ていられないだけなんだろう

 

 

アイドリッシュセブン、ユーザーをマネージャーという位置に立たせることでアイドルの在り方について問いかけてくるの本当に本当にえげつないですね…

たぶん正解なんてなくて、九条鷹匡の言うアイドルの資質も、紡ちゃんの思い描くアイドル像も、IDOLiSH7の在り方も、TRIGGERの姿勢も、全部いいんだと思うんだ

だからこそ難しい

エンターテインメントとして求められるもの、大衆の望むもの、彼らのなりたいもの。その全てを完璧に叶えることはできないから

 

そしてそんな正解のない問い掛けに対して7人ものアイドルを導いている紡ちゃん、ほんとにすごいよな…まだ18歳でしょ?がんばれ…

 

 

おそらく5部で彼らの身に降りかかるのは劇的な何かではない

ゆっくり、じわじわと足元を崩されて行く感じ

「最初はただの雨だったものが、気付けば大洪水に変わっていく」つまりはそういう事なんだろう

 

あぁ、アイドリッシュセブン、本当に恐ろしいコンテンツだな