たからばこ

好きなものを好きなだけ

アイドリッシュセブン メインストーリー 第5部 8章 感想

 

 

優しくて甘い天くんを見ながら、知ってる…私は知ってるぞ…この後に地獄が待ち受けてること…と思ってた。でも正直、何を言うんだろう?とは思ってたんだよね。全然予想出来なかった。

 

天くんが陸くんをずっと大好きで大切に思ってるっていうのは間違いないと思うんだよ。これだけはきっとこの先も絶対に変わらない。陸くんの幸せのためなら自分の家族を、居場所を、捨ててしまえる人だもの。

九条鷹匡に見せてもらったショービジネスの世界に魅せられたというのも全くの嘘ではないのだろうけど、それだけでたった13歳の子供が家を捨てる道理なんてどこにもないし、その覚悟は並大抵なものではなかったと思う。

それだけの思いをかけて陸くんを守った。これが愛じゃないなら、この子が陸くんを好きでないというのなら何なんだってくらいの、深い愛情。だからこそ、その天くんの所業を知ってしまった陸くんが罪悪感に足を取られるようなことにならないかが不安なんだけど。

 

「陸とおそろい」でにこにこしてたのに、急に音楽止まって「オレはぞっとした」とか言うから心臓止まっちゃった…。こっちがぞっとしたわ。

 

「幸せそうに、穏やかに、寂しげにお別れを告げる七瀬天」めちゃくちゃ解釈の一致でガッツポーズした(してない)。

幸福ではあったと思うんですよね。自分の手で、何より大切な陸くんを守れたわけだから。

天くんにとっては家族と離れる寂しさよりも、陸と離れる悲しさよりも、陸が元気で幸せに笑っていてくれる方が何億倍も大切で嬉しいことだったんだろうな。

 

 

ここで楽さんと紡ちゃんのターンに移るわけですが。

「いい人だ」にね、グッときた。初期の楽さんならたぶん「いい女だ」って言ってたのにね。紡ちゃんのことを一般的な恋愛対象である「異性」としてではなく、共に同じ夢に向かって進む仲間でありライバルである「一人の人」として見てるんだなというのがここの一言にぎゅっと詰まってるように感じた。3部のスキャンダルになりかけた件があるから、楽さんが意識して紡ちゃんを異性として見ないようにしてたというのもあるのかなと思ったけど。

そして紡ちゃんの迷いにすぐ気付いちゃう八乙女楽!!!!

分かるんだよね、分かっちゃうんだよね。とても幸せそうに、キラキラと瞳を輝かせて、真っ直ぐに「私の夢はIDOLiSH7が虹を超えていくことです」って語っていた紡ちゃんを知ってるから。そんな彼女に惚れたから。

小鳥遊紡に惚れた八乙女楽だからこその言動をここで持ってくるのはマジでずるいと思った。そんなの無条件に興奮してしまう。恋愛だとかなんだとかを超えて、楽紡のこういうところが大好き。

んでその不安を吐露した紡ちゃんに対しての「望むところじゃないか」ですよ。これぞ八乙女楽。めちゃくちゃにかっこいい。本当に八乙女楽。

もしアイドリッシュセブンのプレイヤーが楽さんだったら、全然違う物語になってたんだろうなと思った。そうじゃないからこんなにもつらく苦しくおもしろいのですが。

 

九条鷹匡も小鳥遊紡も、アイドルを輝かせることに全力をかけている。誰よりもアイドルを愛している。そこは本当によく似てる。けれど2人の決定的な違いは、アイドルを自分の手中のものと思っているかどうか。

紡ちゃんは決してアイドルたちを自分の思い通りに動かせるものだとは思ってない。彼らも一人の人間で、それぞれのベクトルで苦しみも悩みもするものなのだと理解している。対して九条鷹匡はアイドルのことは自分が一番わかってるし、自分の信じる正しい道がアイドルにとって幸せだと思っている。そして現時点での一織くんは、これがガッツリ九条鷹匡と一致してしまっているんだよね。

恐ろしいフラグどんどん立てられてて嫌になっちゃうな!全部へし折りたい。

 

桜春樹という人をもっと見ていたかったな。

4部のたったあれだけでもかなり濃く彼を知ったと思うけど、まだまだ足りないなぁとも思う。

彼の描く愛の話をもっと聞いてみたい。

 

そして双子に舞い戻ると。このオムニバス形式のストーリー仕立て、都志見先生好きだよね。まほやくの周年ストもこんな感じだった。

場面がころころ移り変わるから、別のところで発せられた言葉がそのほかの場面に繋がっているように感じられたりしておもしろい。

 

「お兄ちゃん子も卒業ってこと」とかいう天くんに思わず爆速でいやお前が弟に過保護すぎるんやろがと突っ込んでしまった。そう思ったの私だけか?

 

陸くん「またそうやって、何を隠すつもり」とか「何度も騙されると思うな」とか結構「天にぃが俺に隠してオレのために家を出たこと知ってるよ」って言ってるようなものなんだけど、天くん気づかないんだよな…。それは気づきたくないってことなのかな。そんなに鈍感な子だとは思えないし。

天くんにとって、陸くんがその事実を知らないで、家族を捨てて家を出た薄情者として自分を憎んでいてくれることが有難いわけだから、そうじゃないかもしれないとは思うことすらない、思いたくもない、ということの具現なんだろうか。

 

今回の天くん、陸くんに対して「元気でよかった」「元気でいて」というようなことを何度も言うのよね。天くんにとっては陸くんが元気でいてくれることが何よりの願いなんだろうなぁと思う。元気でいる、ただそれだけのことが陸くんにはどんなに難しいか知ってるから。ほんと、天くんからみた陸くんはずっと幼い日の何にもできない、守らなくちゃいけない、そういう対象のままなんだろうな。

そういう面では天くんも「初期からの成長が見られない人」なのかもしれない。陸くんに対してだけ、ね。

うわ〜…なんか、兄に対して嫌われたくないから隠し事を重ねてしまう一織くんと、弟に対して傷ついて欲しくないから見せたくない現実を隠そうとしてしまう天くん、結構似てるんだな…。

これは初めて気付いた。そっかあ。

まぁでも双子は陸くんがしっかり噛み付ける子だから大丈夫かなとは思う。それをちゃんと天くんが受け止めなくちゃいけないんだけど。往なす能力ばっかり達者になってるんじゃないよ。

 

「何も言わないまま、さよならの顔をしないで」めちゃくちゃ良くないですか?性癖にグッサリきた。黙ります

 

天くんは「七瀬天」だけでなく「九条天」すら捨ててしまうつもりなのかな。だからTRIGGERハウスで陸くんを前に13歳のあの日と同じ笑顔を見せたのかもしれない。

考えすぎかなとも思うけど、どうだろう。九条天を捨て、TRIGGERを捨て、九条鷹匡の望む「ゼロ」として生きていくつもりなんだとしたら。

今回の楽さんは九条鷹匡のように表舞台で仲間を待ち、十さんは桜春樹のように地の果てまで探しに行こうとする、というのを踏まえるとあながち深読みでもないような気がする。残るポストはかつてのゼロ。そこに天くんが当てはまるのなら、なんて。

いやだよ失踪するなよ!!!!!

いや失踪はしないんか?九条鷹匡は消えないゼロを求めてるわけだしな。

それにしても嫌だよ。ゼロに重ねられて崇拝される推しなんて見たくないからな。やめろよ。どうか杞憂でありますように。

 

今回、楽さんに重ねて九条鷹匡を見たことで彼も結局はずっとゼロのことを待ってるのかもなと思った。ずっと一緒にやってきた自分がゼロ以外の人をゼロとして売り出しているのを見たら、嫉妬したゼロが戻ってきてくれるんじゃないか、そんな甘い期待があるのかもしれない。

私の中での九条鷹匡って、どこまでも子供なんだよね。自分の思い通りにならなかったものに対して、憎しみを向けることでしかその思いを消化できない人。だからこそ、こんな方法でゼロが戻ってくるかもしれないと本気で信じているんだろうな。ゼロが消えたのはそんなに軽い思いからではないだろうに。

素直に悲しい、寂しい、戻ってきてとは言えない。

これは一織くんにも言えることで。マネジメントに協力していることがバレそうで怖い気持ちを、強い言葉で紡ちゃんに当たることで誤魔化そうとしてた。

幼稚で過剰な防衛機制。九条鷹匡はそのまま大人になってしまっていて手遅れ感もあるけど、一織くんは今ならまだ間に合うはずなんだよ。だからこそ早くその幼さを自覚してくれたらなと思ってる。推しが九条鷹匡みたいになるの絶対嫌だから…。

 

なんで天くんがこんなにもゼロの舞台から陸くんを遠ざけたがってるのかなって考えた時、私は最初に「自分が陸くんの代わりに現世のゼロになるつもりで、多分陸くんはそれに気付くから、来るな、なんじゃないか」と思ったのね。けどある人の感想で「天の欲しがるものは同じように陸も欲しがってた。つまり、天がゼロになればそれを追いかけて陸も…。天はそれを恐れたんじゃないか(意訳)」を見かけて。なるほどな〜!!!と唸った。感服。

何が本当かは分からないけど、これが一番納得出来た。

 

天くんの自己犠牲的な優しさは絶対に優しさじゃないと思うから真っ向から否定したいのに、そもそも天くん自身が自分のやってることは優しさではない、ただの自己満足だと理解しているだろうからズルい。絶対に分かっててやってるんだよな。

自己満足だけど、それでもいいからやってるんだとある意味開き直られてしまったらもう何も言えないじゃない。

 

ふと思ったんだけど、紡ちゃんみたいにマネージャーとプロデューサーを兼任してるのは普通なんだろうか。めちゃくちゃ勝手な私のイメージで、マネージャーはアイドル側に立って無理をさせないようにする人、プロデューサーは番組等の制作側に立ってどこまでなら無理が通るかを打診する人、という感じなんだよね。

もしこのイメージが合っているのなら、それを一手に担っている紡ちゃんってなかなかしんどい立ち位置なんじゃないかと思う。いや知らないけど。

でも九条鷹匡とかも兼任してたみたいだし、そんなに珍しい話ではないのかな?

 

今のIDOLiSH7が置かれた状況って、陸くんが体調を崩す条件が綺麗に揃ってるなと思うんだよね。忙しいスケジュール、周りからのプレッシャー、目まぐるしく変わっていく環境。なのに陸くん自身はどちらかといえば順調。これを素直に、周りが気を使ってくれてしっかり休めているんだなと受け取って安心していいのか、後々何か大きな反動が来る前触れとして心構えをしておいた方がいいのか、測りかねてる。

どうにも後者のように思えてしまうのは不穏なストーリーに踊らされすぎだろうか。

 

「ゼロを愛する気持ちと憎む気持ちがせめぎ合ってる」ね。ほんと厄介おじさん…。ゼロをただ憎んでいるのなら、他人に責任転嫁することしか出来ない嫌な人と思うことも出来るのに。ちゃんとゼロへの愛情もあるんだもんなぁ…。愛情があるからこそ、突然自分を置いて消えてしまったゼロが憎い。

全ての厄介の火種と言っても過言じゃないような人(過言)なのに、一概に嫌いだとすら言えやしない。

 

九条鷹匡は桜春樹のことが嫌いなわけではなかったんだろうなと思う。ただ、自分の考えが絶対的に正しいと思ってる人だから、自分と同じようにゼロを待とうとしない桜春樹のことが理解できなかっただけで。

信じて待つことも、探し続けることも、どちらも等しく相手への強い思いがあるからこそなのに。自分と違う誰かのことは認められない。

きっと、失うのが突然すぎたから、待つ時間が膨大すぎたから、こんなにも拗れてしまっているんだろうな。

 

結局ゼロは誰なんだろう。

私は作中の誰かではなく、最後まで偶像として描かれるんじゃないかと思ってるけど。

アイドリッシュセブンというアイドルを描くストーリーの根幹にある、ゼロという偶像。だとしたらおもしろい。

 

ナギくんの「お別れの物語はこりごりです」を聞いて、退寮の話が一番応えるのはナギくんなのかもなと思った。大好きな親友をこの世から亡くし、さらに大切な仲間たちとも離れ離れになるかもしれない。そんなの耐えられないよな。

できれば彼にはこれ以上傷ついて欲しくないのだけど。

まぁそれはみんな一緒だな。誰にももうこれ以上傷ついて欲しくない。だけどそれじゃあ停滞したままだから。傷ついても立ち上がって進まなければ。

アイドリッシュセブンはそういう物語だよね。

 

フォロワーさんの「宇都木士郎ちゃっかり毎回出てくる」に笑った。ほんとにな。

ていうかここ、話タイトルの『』はゼロって意味か〜!!と頭抱えた。

 

7章タイトルの『秘密の箱』もなんかいろいろあるらしいじゃん…そんなところまで手を抜かないアイドリッシュセブン…好きだよ…